めまい脳血管内治療科(聖マリアンナ医科大学)はカテーテル治療の専門科(脳卒中・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)

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めまい

めまいは、からだのバランスを保つ機能に障害が起こると生じます。めまい症状の表現の仕方は、患者さんによってさまざまです。「からだがぐるぐる回っている」、「自分のまわりが回っている」、「雲の上を歩くようにふわふわする」などの訴えがあります。 めまいには大きく分けて2つの異なったタイプがあります。一つは周囲がぐるぐると回って見えるような回転性めまいです。これは、他に運動障害や感覚障害を伴わず単独で出現した場合には、脳卒中ではなく、内耳性の疾患を疑います。もう一つは、体がふらふらするような浮動性のめまいです。これは内耳性疾患によるものと脳の疾患によるものがあります。いずれもめまいに伴う他の症状があるかどうかが重要なポイントです。 実際には、めまいだけの症状の場合には、脳卒中以外の原因がほとんどです。たとえば、良性発作性めまいといわれる繰り返すめまい発作を起こすような疾患や、メニエール病という耳鼻科的な疾患が代表的なものです。一方、小脳や脳幹部の障害ではめまいが生じることがあります。突然生じためまいでは、脳卒中かどうかを鑑別するため、脳神経外科や神経内科などの専門医を受診することをお勧めします。

めまいに関係のある身体の器官には、耳(内耳)の器官として三半規管や耳石器、さらに前庭神経、脳幹、視床、大脳皮質があります。三半規管は体の動きをとらえる器官で、回転などの動きを鋭敏にキャッチします。三半規管に障害が起こると体が回転するようなめまいをおこします。 耳石器は加速度や重力をとらえる器官です。ここが障害されると、ふわふわするようなめまいをおこします。前庭神経は、三半規管と耳石器でキャッチした情報を脳幹へ伝える働きを有します。前庭神経が障害されると、強い回転性のめまいがおこります。脳幹には体の位置、平衡を司る神経系が集まり、その障害によって回転するめまいがおこることが多いと言われています。脳幹からの情報は視床、さらに大脳皮質へ伝えられます。ここの障害ではふわふわするようなめまいを感じることが多いと考えられています。 めまいを大きく分けると、耳から生じるめまいと、脳から生じるめまい、さらに特に老人に多いめまいの3つに分けることができます。

耳から生じるめまい

耳から生じるめまいでは、めまいと同時に耳鳴り、難聴、耳閉感があらわれ、まためまいと平行して軽快します。耳が原因でめまいをおこす疾患にはつぎのようなものがあります。

  1. 良性発作性頭位変換性めまい

    頭を動かしたときだけに軽い回転性のめまいがおこり、20秒以内に自然におさまるのが特徴です。最も頻度の高いめまい疾患で、重力に対する頭の位置の変化に対して一過性に回転性のめまいを生じます。中高年に好発し、やや女性に多いです。一旦よくなっても再発することが多いのも特徴です。 この原因は多岐にわたります。何らかの内耳の障害が原因であることもあれば、更年期で神経が敏感になっていることもあります。軽い脳幹梗塞やその後遺症でおこることもあります。また、過労、睡眠不足、酒の飲み過ぎなどが原因になることもあります。きちんとした検査のあとで良性発作性頭位変換性めまいと診断された場合には安心して良いでしょう。予防法は急に振り返る、天井を見上げるなどの急な頭の動作を避けます。逆にめまいが起きる動作をくり返すことによってめまいがおこりにくくなることも知られています。

  2. メニエール病

    難聴、耳鳴り、耳閉感などの耳の症状とともに、発作的に強い回転性めまいを生じます。めまいは数分から数時間続きます。原因は内耳リンパの異常によるものと考えられています。40歳以降の壮年に発症することが多いです。発作を繰り返し、やがて聾となることもあります。

  3. 前庭神経炎

    かぜの症状から1~2週間して、とつぜん回転性のめまいで始まります。めまいのなかでも、もっとも強烈な症状です。食事をすることも、動くこともできませんが、2~3週間ほどで自然に軽快します。原因は、おもにかぜ症状のあとにおこるので、アレルギー反応が関係しているのではないかと考えられています。治療は強いめまいに対してめまいを抑えるクスリを使ったり、ステロイド剤を使うこともあります。

  4. 突発性難聴

    聴神経に炎症がおき、とつぜん強い難聴がおこります。耳鳴りをともなうこともありますが、めまいは比較的軽いものです。

  5. 聴神経腫瘍

    聴神経に生じた腫瘍は、通常な良性のものです。大多数は徐々に難聴がすすみますが、めまいは比較的軽いものです。20%は突発性難聴としてはじまることもあります。腫瘍が大きくなると周囲の脳組織を圧迫して顔面神経麻痺などのさまざまな症状を引き起こします。小脳が圧迫されると、ふらつき歩行があらわれます。治療は手術で取り除きます。ただし、大きさや年齢によっては、放射線治療や経過観察をする場合もあります。

  6. 前庭神経が圧迫されるためのめまい

    加齢によって動脈硬化がおこると動脈が延長し、蛇行します。そのため前庭神経が圧迫を受け、耳鳴りと同時にめまいをおこします。治療には抗痙攣薬(カルバマゼピン)を投与したり、手術で血管と神経を離し、あいだにスポンジをはさむことで完治を目指すこともあります。

脳から生じるめまい

脳が原因でおこるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感を伴いません。しかし、脳の障害による特徴的な症状があらわれます。たとえば、物が二重に見える、顔や手足がしびれる、力が入らない、手がふるえるなどの症状です。また、耳から生じるめまいは何度も何度も同じめまいを繰り返すことが多いのですが、脳から生じるめまいは、いままでに経験したことのないようなめまいであることが多いのです。脳が原因でめまいをおこす疾患にはつぎのようなものがあります。

  1. 脳卒中(脳梗塞、脳出血)

    脳卒中によって平衡感覚の経路のどこかが障害を受けると、めまいがおこります。脳卒中によるめまいの特徴は通常2~3時間、短くても20~30分間はつづくことです。めまいの症状や程度は梗塞や出血が生じた場所によって異なります。たとえば脳幹の前庭神経核という、平衡感覚があつまる部分の障害では強い回転性のめまいがおこりますし、大脳皮質の障害では揺れるような、比較的軽度のめまいですみます。脳卒中によるめまいの治療は、脳卒中そのものに対する治療に準じます。早急に医療機関を受診してください。

  2. 椎骨脳底動脈循環不全

    大動脈から分岐して脳幹や小脳へ血流を送るのが椎骨動脈と脳底動脈です。この血管の血流が悪くなるとめまいをおこします。この場合のめまいは20~30秒でおさまることが多いのです。椎骨動脈は頸椎の中を通っています。そのため、急に後ろをふりむいたり、天井を見上げたり、床を見たりする動作によって血液循環がさまたげられてめまいを起こすことがあります。また元来椎骨動脈が細い人、動脈硬化によって椎骨脳底動脈に狭窄がある人、老化で頸椎が変形し、動脈を圧排している人ではおこりやすいのです。検査はMRAによって椎骨脳底動脈の変化を調べます。治療は首をとくに朝の起床時に勢いよく屈曲しないように気をつけます。動脈硬化の危険因子のある人はそのコントロールをおこない、とくに喫煙者は禁煙します。

  3. てんかん

    てんかんによるめまいは、耳鳴りとともに揺れるようなめまいが15秒ほどつづきます。めまいは自然に治ることが多いのですが、ときには手のふるえがあらわれたり、全身けいれんにいたることもあります。てんかんが疑われるときには脳波の検査をします。治療は抗てんかん薬で発作を抑えます。日常生活では禁酒し、睡眠不足にならないようにします。

老人に多いめまい

お年寄りはめまいをおこしやすくなります。それは加齢によって、平衡感覚が衰えること、血圧を調節する能力が衰えること、高血圧症、糖尿病、あるいは動脈硬化症などいろいろの病気を抱えていることが理由です。
そのためお年寄りのめまいは、原因を簡単に明らかにできないことが多いです。めまいの感じ方もかならずしも典型的ではありません。回転性のめまいがおこるような病気であっても、揺れるようなめまいとして感じることがあります。このように、診断がむずかしいのがお年寄りのめまいの特徴です。お年寄りのめまいをおこす原因にはいくつもありますが、特に多いのが、 1.起立性低血圧、2.椎骨脳底動脈循環不全、3.脳梗塞・脳出血、4.脱水の4つです。なかでも起立性低血圧によるめまいはもっとも多いと考えられるでしょう。

  1. 起立性低血圧によるめまい

    起立性低血圧とは、座った位置から立ち上がったときに最高血圧が20mmHg以上低下するものを言います。若い人では急激に血圧が下がると顔が青ざめ、冷や汗が出て倒れてしまうことがありますが、老人では若い人のように激しい反応がおこらず、反応自体が弱くあらわれます。一方で、血圧が少し下がっただけでもめまいをおこしやすくなります。お年寄りでは血圧を一定に保つ機能が衰えているために、急に立ち上がると血圧が下がり、脳の血液循環量が低下するとめまいがおこりやすくなります。

  2. 椎骨脳底動脈循環不全によるめまい

    動脈硬化が進行したり、頸椎の変形によって、脳幹や小脳への血流障害が起きてめまいが生じます。

  3. 脳卒中によるめまい

    比較的軽症の脳梗塞や脳出血による初期症状としてめまいが生じることがあります。

  4. 暑さによる脱水からおきるめまい

    暑さのために汗をかくと体の水分が失われ、脱水状態になります。その結果、血液の粘りけが増してきて、血流がとどこおり、めまいをおこします。お年寄りはのどの渇きを感じる感覚が鈍くなるので、脱水が生じやすく、周囲の人はいつも注意している必要があります。脱水を防ぐためにはこまめにお茶などを飲み、入浴や就寝前にもコップに1杯の水を飲みたいものです。夜間にトイレに行くのをいやがって水分補給をひかえることもありますが、脱水をおこしやすく、好ましくはありません。脱水状態は、脳梗塞も起こしやすくなります。

聖マリアンナ医科大学 脳血管内治療科

聖マリアンナ医科大学 脳血管内治療科

標榜科目 脳卒中科(脳神経内科)、脳神経外科

診療科長
脳卒中科教授 植田 敏浩
住所
川崎市宮前区菅生2-16-1
電話
044-977-8111